母の若年性アルツハイマーはめまいから始まった|おかん、アルツハイマーになる。

      2017/10/01

実の母親がアルツハイマーになった当時の体験談を、
複数回に渡ってお届けします。


※当記事は小説調に、

他の記事とスタイルを変えて書いています。

 

 

 

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Chapter2  はじまりは、めまいから

「ちょっとお母さん、なんか最近すっごいめまいするねん」
今から思うと、
それは若年性アルツハイマー症の初期症状だったのだろう。

 

母は更年期を迎える頃に、
頻繁に頭痛を伴う
めまいの症状を訴えていた。

 

更年期にさしかかる頃合いだったので、
本人も僕たち家族も更年期障害の症状のうちの1つか、
ちょっと疲れが溜まっているのかな?ぐらいに考えていた。

 

更年期障害とは、
女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が急激に減る事で起こる。
自律神経が乱れ、かなりしんどい思いをするようだが、
時期を過ぎればいずれはおさまる症状だ。

 

しかし、
彼女のめまいの頻度は普通の人の程度を超えていて、
しょちゅう寝込むハメになっていた。
そして、色んな症状がだんだんひどくなっていった。
残念ながら一過性のものでは無かった。

 

「あの時のお母さんは、しんどそうだったね」
いつかそう言いたかった。

しかし、
今や面会に行った時に見る母の顔は、
いつも眉間にシワを寄せ、
悲しい夢を見ているような表情をしているか、
虚空を見つめている。

 

 

当時僕は仕事が忙しかったし、
弟たちも楽しい学業の真っ最中だった。

今思うとなんて親不孝な子ども達だったんだろう、
と思う。
「最近疲れているのかな?」
とちょっと気になるぐらいで、
なにか思いやりを伴う行動を起こしたわけでは無かった。

少し横になっていれば、
またあの口うるさいおふくろに戻るだろう、
と気軽に考えていた。

 

 

 

 

思えば母の人生は、
自分の望む事を最大限我慢した人生だったかもしれない。

 

前章でも述べたように、
母は幼くして里子に出された。
そのせいか、
「わたしは、愛されない存在」
と極端な信念を持って育ったのだろうか。
彼女の人生は、
僕にはとても犠牲的なものに見えた。
まるで誰かに尽くす事が自分の存在価値であるかのように。

 

父は僕たち兄弟が幼い時に、
夫婦間の不仲が原因で出て行ってしまった。
(今ではリリー・フランキーさんの某小説みたいな感じで、
フラッと帰ってくるが)

 

僕たち兄弟を抱えて、
母は一人で父のいない家を守った。

 

間もなく母の養母が亡くなり、
養父の面倒を誰かが見ないといけないという理由で、
僕たち兄弟と母は養父のいる地方都市に嫌々引っ越しをした。

 

僕はその事がきっかけで、
すっかりグレてしまった。

 

 

祖父は昔堅気の人で、
家族に容赦無く注文をつけた。
掃除の仕方や料理の内容、お茶の温度に至るまで。
あおりを食らったのは、やはり母だった。
それでも母は育ててくれた義理がある養父の要望に応え続けた。

 

そして母は僕たちを養わないといけないので、
それまでパートすらしていなかったのに、
突然起業して働き始めた。

数年後、僕たち兄弟の一人が心を病んだ。
心労を重ねていた母に、
さらなる心労がのしかかったと思う。

 

 

 

さらに養父は晩年寝たきりになった。
当時の母は、
仕事に介護に母親業を兼任する、
スーパーお母さんだった。

 

 

 

「目上の人の期待に応えよ。人のために尽くせ。」

 

このような道徳律通りに生きる事が、
幸せになるための条件であるとするなら、
母はまるっきりそれを遵守した人生だったと思う。

しかし、彼女は養父が亡くなってすぐに、
アルツハイマーを発症した。

 

我慢に我慢を重ねて、
養父がなくなった途端に、
何か糸が切れてしまったのかもしれない。

この頃から、
母はひどいめまいに襲われだした。
本当にグルグル世界が回るようだと、
少し気分のよくなった時に母は言っていた。

 

我慢に我慢を重ねた母は幸せだったのか?

 

未だに忘れない事がある。
アルツハイマーになって、
不自由になり始めた母を僕はドライブに連れ出した。
昔話に花を咲かせながら、
田舎町の美しい景色を眺める山林のコースをドライブした後に、
母はこうポツリとつぶやいた。

 

「なんで、わたしなんだろう」

 

僕は何も言えなかった。
「うん」
と答えにならない事をつぶやいたのを覚えている。

僕は山林の美しい景色を再び見た。
自然を彩る緑や黄色や赤の色が、
さっきより鮮やかに見えた。
窓から入ってくる風は、
母の哀しい気持ちを包むかのように少しも冷たくなく、
心地良い柔らかさがあった。

 

僕は、
母に隠れて外を見ながら少しだけ泣いた。

 

 

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 - 母のアルツハイマーの話